なっちゃんと出会う前の私は友達が一人もいなかった。


原因は入学間もないころのこと。




―――――――中学一年



「泉さんだよね?俺、佐伯真(さえきまこと)。三年なんだけど…知らないかな?」




突然声をかけてきたのは、当時校内でよく噂にきいていた"王子様"と呼ばれていた先輩だった。



「えっと……」



俯く私に先輩は

「一緒に帰りながら話さない?」

と持ちかけた。



男の子とあまり話したことがなかった私は、
言われるがままに帰ることになった。



ただ歩いて、すぐ別れた。

それだけだった。



でもそれは、次の日には行内全体で噂になった。



そして、先輩に憧れを抱いていた子達は皆

離れていき、いじめの対象となった。




「泉さん自分のことかわいいと思ってんのかね」

「調子にのりすぎ」

「男に媚び売ってんじゃねーよ尻軽女」




教室や廊下を歩くたびに聞こえる罵声の声。



私の話せる人は啓介だけになった。