「俺が持つよ」

「うん、ありがとう」



水溜りを避けながら歩く。

ふと今朝なっちゃんと会話した内容を思い出した。



『イガといると安心するんだ』



安心するひと…。

横目で啓介を見る。



「ねえ、啓介」

「んー」

「啓介はさ、一緒にいると安心するひとっている?」

「突然どうしたんだよ」

「なっちゃんはイガさんといると安心するんだって。啓介にはそういう人いるのかな〜って」

「そういう意味なら俺は……ヒナかな」

「え、私?」



驚いて歩いていた足が止まった。

1歩先にいた啓介も立ち止まる。



「幼馴染だろ、俺ら」



そういうことか。



「あはは、それなら私もそうかも。啓介といる時は家族といるのと一緒だもんね」

「…ああ」



そっか。

私も啓介といる時が一番安心するんだ。
啓介以外の男の子とはうまく話せないし、友達もなっちゃんぐらいしかいない。


なっちゃんとも中学の頃通ってた塾で知り合って同じ高校を目指すようになったのだ。


内気で弱いこんな私と一緒にいてくれるのは啓介となっちゃんだけ。


その中でも啓介とはずっと一緒にいたから、家族同然なのだ。