「でも、恋愛は待ってるだけじゃ駄目なのよ」

「うー…難しい…」

「ヒナはまだそのままでいいけどね」



恋愛初心者の私も、いつかはなっちゃんみたいになれるのかな。



「まずは手を繋がないとね」



それが私の最初の課題だとなっちゃんは言った。



***



「ヒナ、帰ろう」



いつも通り二人で帰り道を歩く。


手を繋ぐ…

手を繋ぐ…

手を繋ぐ…


そればかり頭の中で考えてしまって啓介の話が入ってこない。



「ヒナ、聞いてる?」

「う、うん!聞いてる!聞いてるよ!そうだ、ジュースじゃんけんしない?」

「何飲みたいの?」

「えーと…りんごジュース!」



いつものようにじゃんけんしようと構えると、啓介は自動販売機の前に立ちなにかしている。

ガコンっと音がして啓介の手の上にはりんごジュース。



「はい、やるよ」

「え、でもじゃんけん…」

「…彼女、だから」



"彼女"という響きに顔が熱くなった。



「…うん、ありがとう」



なんだろう。

前とは違う空気。


これが彼氏彼女なのかな。


でもなんだろう。

前の方がーーーーー心地よかった。



どうして……?