教会には、本当に陽菜ちゃんの同級生がたくさん来ていた。

まさか、広瀬先輩が用意したと言う貸切バスに乗せてもらうわけにも行かず、一人電車と路線バスを乗り継いでやって来た。
前泊したせいで、結構痛い出費。


黒塗りの高級車から降りた広瀬先輩は、スーツを着た運転手さんが開けたドアの向こうに手を伸ばす。

広瀬先輩に手を取られて出て来た陽菜ちゃんは、なんて言うか、今まで見た中で一番輝いていた。

にこりと微笑みを浮かべ、広瀬先輩を見つめる陽菜ちゃん。
いつものようにとろけそうな笑顔で陽菜ちゃんを見つめる広瀬先輩。

2人はまだ私服だった。

広瀬先輩は薄手のジャケットこそ着用していたけど、ラフな服装。
陽菜ちゃんも薄いピンクのワンピースに白いレースのカーディガン姿。

教えてもらった結婚式の時間には、まだ1時間以上ある。
参列すると聞いている学校の先生や先輩たちも、誰も来ていない。
きっと、これから着替えるのだろうな、とそんなことを思う。


まぶしい。


満面の笑顔で手を繋ぐ2人には、木漏れ日が降り注ぎ、陽菜ちゃんの頭に白いベールが見えた気がした。

木陰から、2人が教会の隣の建物に消えるのを、ただ見守った。



サワサワと木々の葉ずれの音が聞こえて来た。

終わった恋だった。
最初から、叶うわけもなく、1パーセントの可能性もない恋だった。

それでも、好きだったんだ。

色々間違えたし、人間として、最低なことをしてしまったけど……。

だけど、好きだったんだ。

ないはずの1パーセントを、いや、0.1パーセントを夢見てしまうほど……。