ため息を吐きながらも、水森は続きを話してくれた。



「って訳で、姉ちゃん情報なんだけど、シークレット祝福ツアーを企画してるんだと」

「……シークレット祝福ツアー?」

「結婚式の当日、内緒で現地に行って驚かせるんだってさ」



夏休みの広瀬先輩の誕生日、車で数時間はかかる避暑地の教会で結婚式。

陽菜ちゃんの体調が悪かったら中止になるから、本当は家族だけで行う予定だった結婚式。
もしかしたら、結婚式も披露宴も中止になるかも知れないと言う。

気持ちに整理は付いていた……と思っていた。
ただ、陽菜ちゃんを見守れたら、陽菜ちゃんが幸せなら良いと思っていた。

けど、実際には、全然付いていなかったらしい。
だって、オレ、思わず願っていた。

結婚式が中止になれば良いって。

なんてひどいやつなんだ。
自分で自分が信じられなかった。

オレ、どうかしてる。

陽菜ちゃんの底なしの優しさを思い出して、胸が軋むように痛んだ。



「おーい。さーとるーくーん」



目の前をひらひら行ったり来たりする手のひらを払いのけ、気が付くと聞いていた。



「……場所と日にち、教えて」

「え!? 略奪!?」

「……なわけ、ないだろ」



いつまでもウジウジ、影から見ていちゃダメだ。
この気持ちに区切りを付けなくちゃ、ダメだ。



「じゃ、祝福?」



って雰囲気じゃないのは、オレの表情から分かるらしい。



「……打ちのめされに行ってくる」



そう言うと、複雑そうな顔をしながらも、水森は、



「じゃ、聞いとくよ」



と請け負ってくれた。



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