未練と祝福 〜14年目の永遠の誓い 番外編(3)〜

「…………あ、の、」

「ああ〜! もう!」



オレが何か言おうと口を開くとほぼ同時に、先輩はグシャッと自分の髪をかき乱すと、はあ〜と大きく息を吐いた。



「もういいよ」

「……はい?」

「もういい」

「……っと、何が?」

「これまで、お前以外のヤツがハルにちょっかいかけて来なかった方が、奇跡的な幸運だったって事だろ?

だって、あんなに良い子なんだぜ、ハル。

誰より可愛くて、底抜けに優しくて、思いやりに満ちあふれていて、更に頭もいいんだ。

多分、これまでだって、ハルに惹かれた男はいたんだよな。

ただ、オレがいたから遠慮してくれただけで。

一ヶ谷は、たまたま、オレのことを知らないままにハルに出会って恋をした。

そりゃ、惚れるよな?」



広瀬先輩はため息混じりに独白する。



「で、色々あって、ハルに相当酷いことをした」



一瞬の間の後のその言葉に、ゴクリと息を飲む。
自覚しているし反省もしているけど、改めて聞くと胃がギュッと締め付けられる。



「でさ……多分だけど、ハル、お前のこと、サラッと許したんだろ?」



強い瞳で見つめられて、思わず頷く。



「……そりゃ、忘れられないよな」



広瀬先輩は、はあーっとため息をつく。



「いいさ。ハルがオレしか見てないのは間違いないから」