キュッキュッと、先生の足音が私に近づいてくる。心臓の鼓動の速さよりも先に、私は先生に向かって声を張った。
「わ、私が……っ。私が今さら先生のことを好きだと言ったら困りますか?」
本当は伝えたあと、同じ気持ちでそういうことになれたら良かった。
思い描いてた恋愛とは全然違うし、まさか自分がこんな回り道をする恋をするなんて、想像すらしてなかった。
熱くなる私の顔と真逆に、先生は涼しい顔をして、ちょっとだけその口元は笑っている。
「俺、完全に軽蔑されたって思ってた」
キュッと、私の前で止まった足音。
ふわりと、苦い煙草の匂いがしたけれど、先生への溢れる気持ちに合わせて流れてくる涙はしょっぱい。
「誘ったのは、私ですよ」
「威張るなよ」
そう言って、先生は涙を指先で拭う。



