なかった、ことにしたくない。 卒業までの思い出なんて欲しくないのに、先生が欲しくて仕方がない。 先生はゆっくりと眼鏡を外して、ギィィと背もたれの椅子を動かして、私の目を見つめる。 久しぶりに、目が合った。 じわり、じわり、胸が熱くなる。 「お前さ、本当は初めてだったろ」 「え?」 「分かるよ、そんぐらい」 大人ぶったつもりでいたのに、見透かされていたなんて恥ずかしい。