桜の蕾がふくらみ始めた頃、いつものようにバスに乗ろうとした。
…んだけど、ダッシュしたにも関わらず、無情にもバスは目の前で走り去ってしまった。

「はあ…。」

自分の頑張りが報われなかった悲しさと、全力ダッシュしたあとのしんどさで自分自身がいたたまれなくなって、思いっきりため息をつく。
ため息をつきながら待合室の中に入ると、そこにはちょっとだけびっくりした顔の、あの人がいた。

いつもここにいる、バスに乗らないあの人が。

やっちゃった。
誰もいないと思ってたのに…!!
恥ずかしくなって、真っ赤になってるであろう顔をうつむいて隠す。


おとなしく、一番離れた席に座る。
…早く、バスが来れば良いのに。
恥ずかしすぎて、顔を上げられない。
隅っこの席で、気を紛らわせるためにスカートのプリーツをそっと指でなぞる。紺に茶色いラインの入った制服のスカートをじっと見つめてみたけれど、やっぱり恥ずかしさは紛らわせそうにない。