「あれ、なんか冷静だね」
なぜかしいちゃんがきょとんとした顔をしていた。
「冷静って?」
「蓮くんが女子に話しかけられてると、ムムッて苦虫を噛み潰したような顔してるのに」
あれ、そういえば私、蓮が話しかけられてるところを普通に見てた。
先輩たちは蓮の行く手を阻むように腕を触ったりしてるのに、いつもみたいにモヤッとしない。
それがスッキリというより、逆に気持ち悪く感じて、「そんなことないよ!蓮がモテるのはいつものことだし、こんなことで焼きもち妬いてたらキリがないっていうか……」と、必死に弁解してる自分がいた。
しいちゃんは「そうだよねー」と、またパンを口に入れる。
私は自分の気持ちを確認するように、ネックレスへと手を添えた。
大丈夫。この鼓動は本物だ。
初恋の煌めきだけは色褪せることはない。
だから蓮への想いも本物だ。
「あ、そういえばさー」
しいちゃんが思い出したように声を出す。
「この前の部活帰りに学校の正門に他校の女の子が立ってて、早川零くんはまだ残ってますか?って聞かれたよ」
「……零?」
「うん。部活やってないし、とっくに帰ったと思うよって言ったらそうですかって。S女の制服だったよ。他校にまでファンがいるなんて、零くんもすごいねー」
……チクリ。
あれ?なんで、私今少しだけイヤな気持ちになってしまったんだろう。



