「そっと取ってよ」
「割れ物じゃねーのに大袈裟だな」
零はすぐに地図を取った。安心した私はくるりと方向転換すると、床に置いてあった〝なにか〟につまずいて体勢を大きく崩してしまった。
ドンッ!と背後にあったもうひとつの棚にぶつかり、その反動で棚に置かれていた教材が降ってくる。
「あぶね……っ!」
私は零に引き寄せられた。
床に落ちていく教材の音。だけど頭にはなにも当たってない。なぜなら私は守られるように零の身体にすっぽりと覆われているからだ。
ドクン、ドクン……。
顔の位置がちょうど零の心臓の部分だから、零の鼓動が直に伝わってくる。
「大丈夫か?」
私を抱きしめたまま、零と目が合う。
痛くはない。痛みの代わりに、また気持ちが変になる。
蓮に抱きしめられた時と、零に抱きしめられている今は包まれる匂いも声も強さも全然違う。
私はつまずいた地球儀がコロコロと転がってガタンと壁で止まる。なのに、心臓の鼓動は鳴り止まない。
「お前、顔赤くね?熱でもあんの?」
零が確認するように私のおでこに触った。



