たとえばきみとキスするとか。



零は追ってこなかった。

その代わり、私の胸の鼓動の速さはまだ続いている。


私はそのまま脱衣場へと向かい、焦げ茶色のバスケットの中に着替えを置いた。


――『ガキくせーパンツ』

うるさいって言ってやればよかった。


なんなの、本当に。私を困らせるようなことばかりしてきて、零のことが全然わからない。

わかれよ、なんて言われてもわかんない。


「……莉子」

鉛のように重たいため息をついたあと、脱衣場のドアの向こうから声がした。


「え、れ、蓮?」

私は慌てて下着の上にバスタオルを置いた。


「ごめん。まだ服を脱いでないなら開けてもいい?」

「う、うん。大丈夫、だけど……」

すると脱衣場の扉がすぐに開いて蓮の顔が見えた。


「どうしたの?」

なにか急な話しでもあるのだろうかと不安になる。すると蓮が静かに口を開いた。


「さっきの話」

「え?」

「俺も2階に用があってリビングを出たらふたりが階段で話してるのが聞こえたんだよね」

ドキリと、心臓が口から出そうになった。