たとえばきみとキスするとか。




「……ねえ。なんでさっき私にキスしようとしたの?」


訊ねながらも、自分の顔が熱くなっていくのを感じた。


確かめないとモヤモヤする。

ふざけていたなら怒るし、私をビックリさせようとしたならそれはそれでいい。未遂だったわけだし、零だって本気で私にキスなんてするわけない――。



「なんでって、したくなったから」

キャパオーバーの答えが返ってきて、私はドキッとする。


「い、意味わかんないこと言わないで!」


零が私にキス?
したくなったからしようとした?

考えても考えても、頭が回らない。


「わかんねーじゃなくて、わかれよ」

零が脅すように私の左手首を握った。


掴まれている場所から熱を帯びていく。

今まで一度も意識したことなんてなかったのに、零の体温や零の手の感触がじわりと伝わってきて。こんなことをする零もおかしいけれど、こんなにも動揺している私のほうがもっとおかしい。


零に、ドキドキなんてするはずない。

私が好きなのは蓮なんだから。


「……離してっ!」

私は逃げるように手を払って、バタバタと階段を駆けおりた。