たとえばきみとキスするとか。



リビングのドアの向こうからは蓮の話し声が響いていて、また保健室のような緊張感がうまれてしまった。


「ふ、ふざけるのはやめて」

「なんでふざけてるって決めつけんの」

「零はいつもそうでしょ!私の困ることしかしないし、そうやって反応を見て楽しんでる――」


「だから、お前はなんにもわかってねーって言ってんだよ」


黒髪から見え隠れしている瞳が、獲物を狙う狼みたいで、少しゾクッとした。


「わからせてやってもいいけど、困るのはお前だぞ」

「……どういう意味?」

そう問いかけたあと、零の顔がスローモーションのように近づいてくる。


お互いの息が溶け合う距離。

瞬きをする暇もなく、ヤバい……と思った瞬間に、リビングのドアが開き、私は零を突き飛ばした。


「……え、ふ、ふたりともどうしたの?」

すぐに蓮が私たちの様子に気づく。


「な、なんでない!ふざけてただけ!」

私は作り笑いを蓮に返した。


……今のは、なに?

あと、1秒遅かったら……私、零にキスされてた。