たとえばきみとキスするとか。



……そういえば零の部屋、久しぶりに入った。

生活感のない殺風景さは相変わらずで、物を溜め込んでしまう私とは違い、零は躊躇なくなんでも捨てる。


「……お前、俺のことムカついてたんじゃねーの」

謝罪はないくせに、怒らせた自覚はあったようだ。


「零のためじゃないよ。こんな生傷だらけだったらみんなが心配するでしょ」

顔を見ればなにかあったことぐらいすぐに分かってしまうけど、上級生とケンカしたなんて知ったら雪子おばさんも晴彦おじさんも不安になる。


見知らぬ人に絡まれたことにする?

いや、警察に連絡されたら今以上に大事になる。


いっそのこと、大型犬とやり合ったことにする?

いやいや、零にここまでの傷を負わせられる大型犬なんて、もはやそれは犬じゃなくて熊じゃん。

私が「うーん、うーん」と頭を悩ませていると……。



「悪かったなんて思ってないけど、ちょっとやりすぎたなって反省してる」

零がぼそりと呟いた。

この言いづらそうな声と素直じゃない顔。この言葉がケンカをしたことに対してじゃないことはすぐに勘づいた。

だけど、私も意地悪をされたから、素直に受け取ってやらない。


「なにが?ケンカをして反省ってこと?」

「違う」

「どう違うの?」

「……ネックレス、だよ」

零がふて腐れながら言った。