「いや、なんか晩ごはんの時も話してなかったし、目すら合わせないようにしてたっていうか」
「えーそんなことないよ。べつに零と話すことなんてないし、ご飯の時だってみんなが盛り上がってても、零はひとりだけ黙々と食べてるタイプじゃん」
だから私の変化なんて気づかれてないって思ってたのに、蓮はけっこう鋭いというか、そういう細かい空間感に敏感だ。
蓮は「それならいいんだけど」と、納得したように笑みを見せる。
私は無意識に、胸元へと手を添えた。
いつもあるネックレスがないだけで、首が軽く感じてしまう。
ネックレスのことは、蓮には言えない。
チェーンを切られたこともそうだけど、5年前にもらったものを今でもつけているなんて、もしかしたら引かれてしまうかもしれないから。
そして部屋の前へと行き、ドアノブに手をかけた瞬間に隣の部屋のドアが開いた。
それは黒いスウェット姿の零。
いつもならなにかしら余計なことを言ってくるのに零は無言で、私も目を合わさない。
そのまま零はスッと後ろを通りすぎていって、私はムッとしながら部屋の中へと入った。
なんで零があんな不機嫌な態度なの?
普通は謝ってくるべきでしょ?
またムカムカとしてきたけど、私は感情を押し込めるように唇を噛んだ。



