たとえばきみとキスするとか。



「だって莉子がうちのキッチンにいるなんてまだ慣れないから、つい話しかけたくなっちゃって」

「暇なら手伝ってくれてもいいのよ?」

「でも3人で並んだら狭いし、莉子のエプロン姿をソファーで俺は見てるよ」

蓮はそう言って本当にソファーのほうへと行ってしまった。


雪子おばさんが貸してくれたのは、私が好きなピンク色のエプロン。デザインが可愛くて買ったけれど、一度も使わずに箱に入れたままだったらしい。


「そのエプロン、莉子ちゃんにあげる」

「い、いいんですか?」

「うん。莉子ちゃんに似合ってて可愛いから」


雪子おばさんと蓮は〝可愛い〟とストレートに言ってくれるところも似ている。

今日はかなり落ち込むことがあったけど、おかげでちょっと明るくなれた。


……と、その時。バンッ!と勢いよくリビングのドアが開いて、それは学校から帰ってきた零だった。


「こら、ドアは静かに開けなさい!」

また雪子おばさんの怒る声が響く。


零はただいまも言わずに、そのまま冷蔵庫へと直行してペットボトルの水を取った。

私は零のほうを見ない。

ぎゅっとレタスを持つ手が強くなったところで、また乱暴にドアを閉めて零は自分の部屋がある2階へとあがっていった。