たとえばきみとキスするとか。



「零がたまに優しいと、ちょっと気持ちわるい」

「あ?」

そうそう、この威圧的な目。こうじゃなきゃ私の調子が狂ってしまうのだ。


「お前が鈍いだけで、俺はけっこう優しくしてるよ」

「え、待って。どの辺が?」

「チャーハン返せ」

「ごめん、嘘、嘘っ!」

取り上げられそうになったご飯を必死で死守していると、突然零に頭を強く押さえつけられた。


「な、なに……」

「しっ」

口を手で覆われてモゴモゴしていると、零が〝あっち〟と首で合図をした。


私は低姿勢のまま視線を変えると……そこには生徒がふたり。


緑色のフェンスに囲まれた向こう側は運動部が使う部室があり、その建物もこの場所同様に人目にはつかない。

ちょうど対角戦上の位置で私たちからは見えるけど、こうして身体を小さくしていれば、おそらく向こうは気づかないだろう。


まるでスパイになったようでドキドキするけど、心臓がうるさいのはその理由じゃない。

だって、だって……。



「早川くん、好きですっ!」

女の子が顔を赤らめて告白していた相手は蓮だった。