たとえばきみとキスするとか。



どうしようと、背伸びをしながら前方を確認していると「早く進めよ」と、三年の男子に背中をドンッとされて、持っていた小銭入れが床に落ちてしまった。

その拍子にお金がチャリンチャリンと転がってしまい、私の100円や10円をみんなが足で踏みつけていく。


「すいません、すいません」と、なんとか中腰になりながら拾い「なにこの子、邪魔ー」と、いつの間にか色んな人に迷惑がられている。

急に恥ずかしくなり泣きそうになっていると、グイッと誰かに手を強く引っ張られた。

私はそのまま列から離れ、顔をあげると……。


「なにやってんだよ、バカ」

そこにいたのは零だった。


「だって、だって……っ」

「お前みたいなチビが人混みに入ろうとするのが間違いなんだよ」


そんなことを言われても、食堂は平等だし、うまく買える時だってある。でも今日は失敗。また失敗ばっかりだ。

また悲しくなっていると、上から重いため息が降ってくる。


「……たく。とりあえず人がうぜえから出るぞ」

零は私の手を掴んだまま。

引っ張られるように食堂を出る寸前に「あ、零くんだ」「ヤバい。目の保養!」と、女子たちが色めき立っていることに気づいた。


……あれ、もしかして零も人気がある?

怖がられてるって思ったけど、黄色い声援は蓮に向けられるものと同じくらいの数だった。