たとえばきみとキスするとか。






次の日。昨晩は色々な人に迷惑をかけてしまったうえに、今日も私の迷惑は継続中。


「莉子ちゃん。私仕事に行くけど、鍋におかゆが作ってあるから食欲がある時に食べてね」

「……はい」

私のおでこには冷えピタ。


今朝体温計で計った熱は37.8度。そう、私は風邪をひいたのだ。

昨日は長時間雨ざらしに当たったせいか、身体の震えが止まらずに、零に手を借りながら私は家へと帰った。

血相を変えて蓮が理由を聞いてきたけれど、私はなにも言えなかった。そのあとはお風呂に入り、倒れるようにベッドへと横になり、目覚めたらこの有り様。


家の中には私しかいない。

蓮や零はもちろん学校に行ったし、晴彦おじさんも仕事。だからなのかとても静かだ。

静かすぎて、考える。


――『このネックレスをくれたのは誰?』

『俺だよ』


薄々は気づいていた。

だけどいざ零の口から肯定されて、私は動揺した。でもそれ以上に自分の心臓の速さに驚いた。


まさか零に対して、こんな気持ちを抱くなんて想像もしていなかった。

ううん。私は気づかないフリをしていたのかもしれない。


まっすぐと私を見つめる瞳や、冗談と思えないほど真剣に触れてくる指先。私はそのたびに心を振り回されて、最初は怒りだったはずなのに、恥ずかしさを感じるようになった。


顔が赤いと、バレないようにした。
だって、それは意識している色だ。

私は「はあ……」とため息をこぼして、顔を両手で覆う。


全部、今みたいに熱のせいにできたらいいのに、私はまた零のことを考えて体温を上げている。