たとえばきみとキスするとか。




すると、ザッザッと地面を蹴るような足音が聞こえてきた。

こんな時間にグラウンドから走ってくる人なんているはずない。

不審者かもしれないと、今さら怖くなり、ネックレスをぎゅっとしながら身体を小さくしてると……。



「ハア……ハア……ッ、いた」

息を切らせて暗闇から現れたのは零だった。


「な、なんで……」

「なんでじゃねーよ、バカッ!!」

零の声に身体がビクッとなる。

零はとても怖い顔をしていた。それは今までで見たことがないぐらい。


「何時だと思ってんだよ!全然帰ってこねーし、電話も出ねーし」

スマホはあれから確認していない。


みんなに心配かけたことは反省してる。でもそれ以上に大切なものがあっただけ。


「……たく、なにしてたんだよ」

零は苛立つように頭を掻いた。


「……ネックレス、探してた」

「はあ?」

また零の大きな声が響く。なんだか今さら寒さや安心感で感情が高ぶってきて、瞳から涙が流れてきた。


「た、体育の時にっ……落としちゃって。それで、今やっと見つけたの……っ!」

涙で声が途切れ途切れになる。

零は深いため息をついて、しゃがんだままの私と目線を合わせた。


「傘は?」
 
「あったけど、探すのに邪魔だと思って……」

「バカか」


零はびしょびしょの私の姿を見て、また肩を落とす。

鏡がないから確認できないけど、私はきっと泥だらけで。私の頬についた汚れを取るように零が指でなぞった。