「莉子が俺の部屋に入るの久しぶりじゃない?」
蓮が教科書とノートを準備しながら言った。
「う、うん。最後に入ったのは……」
「中学2年のバレンタインの時。たくさん貰ってると思うけど、私からって、逃げるように置いていった」
そうそう。学校でみんながチョコを渡してるのに、私だけ渡せなくて、最後の手段として蓮の部屋に押し掛けたのだ。
と、言ってもチョコを渡しに蓮の家に行くなんて本人にも言えずに、お母さんがタイミングよく『雪子のところにリンゴ分けに行ってきて』なんて言ったから、そのついでにというか、口実に渡しにいったんだ。
あの時は、緊張で、かなり吐きそうだった。
だから、本命なんて言うこともできなくて、押し付けるような渡し方になってしまったんだけど。
「一番最初に食べたよ。莉子のチョコ」
「え?」
「っていうか、いつ貰えるんだろうって実は一日中ソワソワしてたんだ」
ドクンと、心臓が小さく鳴る。
もし、あの時勇気を出して想いを伝えていたらどうなっていたんだろう。蓮と幼なじみじゃなくて、べつの関係が生まれていた可能性はあったんだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながら、私は蓮に勉強を教えてもらった。



