たとえばきみとキスするとか。



「俺とデートするのイヤ?」

蓮は私の顔を覗きこむ。

この言い方と表情は、完全に反則だ。


「……イヤじゃ、ないです」

イヤなわけがない。

蓮のことは大切だし、他の人とは違う特別な感情も残っている。だけど、やっぱりデートと言われると無意味に身構えてしまう。


「じゃあ、行こう」

「わっ、ちょっと……っ」

蓮は私の手を引くように歩きはじめた。次第に手の位置は下がり、蓮は私の手をぎゅっと握っている。


蓮と手を繋ぐのは、これで2回目だ。


初めては、5年前の水族館。あの温もりが鮮明に焼き付いているせいか、今の手とあの時の手の感触が違うように思える。

でもそれはきっと、子どもではない高校生の蓮の手になってしまったからだと思うけど。


私たちはそのあと映画を見た。

漫画原作の王道ラブストーリー。もちろん私が見たいって言った。CMで宣伝を見てから、ずっと気になっていたから。

上映前に、大きなポップコーンをひとつ買った。それをふたりの間に置いて、映画がはじまると何回かポップコーンの箱の中で手が当たった。

蓮は映画の内容的にちょっと退屈かなって思ったけど、ちゃんと最後まで見てくれていて、暗闇の空間で何度もその横顔を確認してしまった。