たとえばきみとキスするとか。




「出てけ。すぐ下に行くから――」

「零は柊花のこと、好きだったの?」

気づくと私はそんなことを聞いていた。


零が嫌いな干渉。こんなことを聞けば零の機嫌を逆撫ですることは分かっている。だけど、だけど……。


「べつに」

零の答えはシンプルだった。


「べつにって……。好きだから付き合ってたんでしょ?」

「好きじゃなくても、付き合えるよ」

「え、待って。じゃあ、零は好きじゃないのに柊花と付き合ってたってこと?」


頭の回転が追い付かない。零は傍若無人だけど、遊びで付き合おうとする人じゃないと思ってたのに。


「……柊花はたぶん、今でも零が好きだよ」

柊花の表情は恋をしている人の顔だった。


「零とのデートのことやキスのことも、すごく嬉しそうに話してた。それなのに……」

「キスなんて、気持ちがなくたってできるよ」


15年間ずっと傍で見てきた零が、まるで知らない人みたいな口調で言う。