たとえばきみとキスするとか。



『お前はさ、俺の気持ちに気づいてるのに気づいてないフリをして、分かってんのに分かってないフリをしてんだよ』

そうかもしれない。

だって認めてしまえば、私も自分の気持ちを認めなきゃいけなくなる。

ずっとあの日から蓮のことだけを想ってきたはずなのに、イルカのネックレスに触れられないほど、心がぐらぐらと揺らいでいるのだ。


「ん……」

私の気配に気づいたのか、零はゆっくりと目を開けた。そしてすぐに目が合い、ビックリしたように瞳を丸くさせる。


「は?なんでお前、そこにいんの?」

「ご飯だから呼びにきた」

「……勝手に入ってくんじゃねーよ」


その顔はとても迷惑そうな顔だった。私だってドアの前で呼び掛けた。だけど反応がなかったからこうなった、なんて言い訳しても無駄なことは分かっている。

ドアノブに手をかけたのは、私だ。

それで、寝ていると気づいたのに、私は零の寝顔をぼんやりと見ていた。