たとえばきみとキスするとか。



「お前はさ、俺の気持ちに気づいてるのに気づいてないフリをして、分かってんのに分かってないフリをしてんだよ」

零がぎゅっと私の手首を掴み、また怖い顔をした。


「本当にうぜーよ。お前。俺が島崎となにかあったらなんなの?なにかあったら、お前の中でなにか変わってくれんの?」

「………」

「付き合ってた。中3の夏から受験がはじまる冬まで。これで満足か」

零はゆっくりと私の手を離して、2階へとあがっていった。


私の手首にはくっきりと赤い手形が残っていて、本当に加減を知らないバカ力。

でも痛いのは、手首だけじゃない。


柊花と付き合ってたという事実と、自分の中で整理がつかないこの気持ちが、ひどく傷んだ。


……と、その時。

「ただいま」と、リビングのドアが開いた。私はその声に慌てて背を向ける。


「お、おかえり。蓮」


私、今すごく歪んだ顔をしてると思う。

それを蓮に見られたくないのに、蓮はやっぱりすぐに気づいてしまう。