「ん〜……。男の人は、好きじゃないかな」
「……え?」
その予想外の返事に、私はピタリとその場で動きを止めた。
(それって、つまり……。女性が好きってこと……?)
チラリと様子を伺うようにして静香さんの方へと視線を送ると、私を見つめていた静香さんと視線が絡まる。
「だって……。女の子の方が、プニプニしていて美味しそうでしょ?」
そう言った静香さんの表情はとても妖艶で、ドキリと鼓動を跳ねさせた私は手元を滑らせた。
——パリーン!
私の手から滑り落ちた食器が、床にあたって砕ける。
「っ……す、すみません!」
勢いよくその場に腰を下ろすと、砕けた食器を拾おうと欠片に手を伸ばす。
「っ……!」
ピリッとした痛みを指先に感じた——次の瞬間。
指先に薄っすらと滲んだ真っ赤な液体。それは見る見るうちに濃さを増し、ついにその重さに耐えきれなくなると私の指先からポタリと床へと落ちた。
「——真紀ちゃん!」
焦った声音を上げる静香さんは、私の隣に腰を下ろすと傷付いた私の指を掴んで自分の口の中へと入れた。
———!?
驚いた私は、反射的にその手を引っ込める。そんな私の手をグッと引き戻すと、再び口に含んでピチャピチャと舐め始めた静香さん。
私は、そんな静香さんの姿から視線を逸らすことができなかった。
「真紀ちゃん……っ、真紀ちゃん」
そう何度も呟きながら、ピチャピチャと指を舐め続ける静香さん。
その姿は、やけに綺麗で色っぽくて——そして、何故かとても恐ろしかった。



