神様修行はじめます! 其の五のその後

 ……おい。


 聞こえてるっつーの。


 さっきからモロ聞こえなんだよ。


 てかお前ら、わかっててやってるだろそれ。


「お前たち、猿芝居もいいかげんにせい。見ていてムズ痒くてたまらんわい」


 絹糸が、足で首筋をカカカッと掻く仕草をする。


「なにが『まったく考えつかなかった!』じゃ。白々しい。そもそも当主を前にして平伏もせずに、ようもそんなフザケたことが言えるものじゃ」


「なにを言うか、この異形め! これは非常に由々しき事態なのだぞ!?」


「そうだ! 事態の深刻さも理解できぬ四つ足の異形は黙っていろ!」


 絹糸に上から目線で悪態をついた連中は、いそいそとその場に揃って門川君に平伏する。


「当主様。我らからのご提案を申し上げてもよろしゅうございますか?」


 そのわざとらしい慇懃な口調に、門川君が小さくため息をついて答えた。


「……いや、いい。ぜんぶ聞こえていたから」


 そして、もうウンザリといった暗い表情で黙り込む。


 なんだか少し悲しそう。


 その気持ち、わかる。これまでなにを言っても、どうやっても、門川君の意思や意見はないがしろにされてきた。