神様修行はじめます! 其の五のその後

 怖がって誰も近寄ろうとしないこの場所に、みんな毎日のように通ってくれていた。


 そして、しま子に話しかけてくれていた。


 なにを言っても通じなくて、牙を剥いて叫んでばかりのしま子に、根気よく優しく語りかけてくれていたんだ。


『信じてるよ』って。


 それがあたしにとっても、どれほど心強かったことか!


 みんな、ありがとう。ありがとう!


 信じてくれてありがとう!


 みんなのおかげだよ!


「ほ、ほんとに、ありが……」


 お礼を言おうとしたら、隣に門川君が立った。


 彼のこの表情をなんと例えればいいだろう。


 こんなに優しく慈愛に満ちた表情を、あたしは知らない。


 門川君。ありがとう。


 あなたが異界から命を賭けてしま子を連れ戻してくれなかったら、こんな日を迎えることはできませんでした。


 ありがとう。ありがとう。


 ありがとうって言葉じゃとてもとても言い表せないけど、その分、心を込めて言わせてください。


「ありが……ありが……あ、ああぁ――……」


 だめだぁ。やっぱり声にならないよおぉ……。


「天内君、無理して言葉にしなくても大丈夫だ。キミたちの気持ちは僕たち全員の気持ちだから」


 そんな優しい言葉をかけられて、また、泣けて泣けて……。


 あたしは顔をグチャグチャにして、心からの気持ちを込めて、ひたすら唸り続けた……。