門川君はそう言ってくれたけど、あたしは首を横に振った。


 だってあたしの力では、どんなに諦めずに頑張っても守れなかった物がたくさんあったから。


 願いをかけることは無意味じゃないし、諦めずに頑張ることもすごく尊いことをあたしは知っている。


 けれどそれで必ず幸運が訪れるわけじゃないし、なによりあたしは自分がけっこう無力だということを、自分で知っている。


「門川君、今回はたまたまラッキーなだけだよ。あたしは、思い通りにならないことばかりだよ」


「すべてを自分の思い通りにすることが君の望みではないだろう?」


「そりゃそうだよ。だってすべてが自分の希望通りになんかなるはずないもん」


 すべてがあたしの希望通りになっていたなら、しま子が記憶を失うこともなかったろうし。


 門川君との結婚だってスムーズに進行していたろう。


 現世と断絶する事態にも陥らなかったろう。


「そもそも君は、神の一族の世界と関わることからして望んでいたわけではなかったろう?」


「うん。じー様のフェイントでこっちの世界に誘導されたから。でもあたし、ここに来て良かったと心底思ってる」


「だが普通の感覚で言えば、キミはこちらの世界に来たせいで非常に不幸な境遇に陥ってしまったのだぞ?」