叫びたい思いが膨れ上がって心を強く圧迫する。


 でも、言ってはいけない。しま子を縛り付けることは許されない。


 赤い大きな後ろ姿が涙で霞んで、思わず泣き声が溢れそうになって必死に歯を食いしばって耐えた。


 すると突然、しま子がピタリと立ち止まった。


 その場にヒョイとしゃがみ込み、すぐに立ち上がって、ズシンズシンと足音を響かせながら走って戻ってくる。


 涙目になってキョトンとしているあたしに向かって、赤い手が突き出された。


 その手の中には……。


「……花?」


 一輪の、花。


 しま子とあたしの絆の証である花を、しま子がキラキラした笑顔で差し出している。


 しま子と花を見比べた次の瞬間、胸の奥が痛いくらいギュウゥッと切なくなって全身が熱くなった。


 目の前の純粋な微笑みも、小さい可憐な花も、嬉し涙で霞んでしまう。


「しま子、これは、あたしの側にいてくれるってこと?」


 鼻を啜りながらそう聞いた。


 返ってくる返事はわかっているけれど、ちゃんと確かめたいんだ。


 そんなあたしの気持ちを理解しているのか、しま子は大きな丸い目がなくなっちゃいそうなほどキュッと細めて、うなずいてくれた。


「うああぁ~~」


 何度も何度もうなずく姿を見ていたら、涙がブワッと溢れてくる。


 あたしはクシャクシャの顔で涙を拭きながら、あたしを安心させるように何度もうなずき続けるしま子の姿を、この目に焼き付けた。


 ありがとう、しま子。ありがとう。


 今度こそあたしたちは、ずーっとずーっと一緒だね。


 もう二度と離れたりしないね!