小学生の夏休み、ある作品展を見に行った。どこで行われたものだったのか、誰のものだったのかはもう覚えていないけれど、お母さんに連れられていたことだけは覚えている。


天理は、絵なんて興味ないからと機嫌が悪くて、お父さんはそのわがままに付き合っていた。あたしたちのずっと後ろで、天理を慰めていたように思う。


『天香、今年はどんな絵を描くの?』


お母さんは常に笑顔。今年も、あたしが何かしらの賞をとることを期待している。今思えば、そんな想いが込められていたような気がする。


でもあたしはそんなお母さんの考えとは裏腹に、そこに溢れている色たちと会話をするのに夢中だった。


『お母さん、この色はね、こっちの出しゃばりの赤に埋もれちゃってるけど、本当は』

『そっかあ、キミはみんなに見られてるのが恥ずかしいんだねぇ』


そんなことをボソボソと話しては、次々と並ぶ絵を渡って、そこで出会う色にあいさつをした。


そんな中、あたしはある1枚の絵と出会う。



『…! お母さん…!!』



思わず、声が出た。その絵は、作品展の1番最後、ううん、それどころか、出口付近にぽつんと置いてあったもの。

真っ暗闇の中に、小さな輝かしい星たちが描かれた作品だった。


———【星夜光。】


少しクタクタな字で、そう書かれてある。きっとこの絵のタイトルなのだろう。

でも、あたしはその作品に吸い込まれそうになって、思わず腰が抜けてしまいそうになったのを覚えている。


そこに描かれている星ひとつひとつ。その色は、ひとつとして同じものはいなかった。もっと言えば、双子だっていない。どのコもちがういのち。違う色。


それが小さなキャンバス一面に散らばっていて、自分が主人公だと輝いているようだった。


本物の星の集まりよりも、写真よりも、きれいだと感じた。