“ でも天香、会いたいって顔してる ”
「…!!」
さっき、自分がつくりだした色たちに、そう言われたのを思い出す。黄色とオレンジの間に生まれた子。ニヤニヤしていた。
その表情を思い出して、ボッと顔が熱くなる。
「…天香?」
「…!」
ちょん、と、千歳くんの人差し指があたしの前髪に触れた。くいっと上げられる前髪。千歳くんの熱が、直に伝わってくる。
「あ、汗かいてるからやめた方がいいよう」
「は? かいてねーし、むしろ汗臭いのは俺の方だよ」
「ち、千歳くんは臭くないよ!」
顔の前にあった、その大きな手のひらに手を伸ばした。
…近くで見ると、ゴツゴツしてる。線は細いのに、男の人って感じで驚いてしまう。
千歳くんの手は、こんなに大きかったんだ。
「…お前、手冷たくね?」
「そうかな。末端冷え性?」
「いや、知らねーけど」
確かに、千歳くんの手は温かかった。ほんの少しだけ、汗ばんでいた。でもこれはきっと、さっきまでたくさん運動していたから。
「あ、あたしのは、心が温かいからかな…?」
笑ってみせる。ギュウッとしまった胸の痛みを誤魔化したかった。
「なんだそれ。俺の心は冷たいって言いたいわけ」
「ひゃっ、そんなんじゃないよう!」
掴んでいた手を離された。代わりに、頰をギュウッと掴まれる。そこに、ピリッと走った痛み。その痛みは、またあたしの胸まで伝っていった。
…会いたかった。
そんなことを言ったら、千歳くんはどんな顔をするんだろう。
なんて、言うんだろう。
どんな風に思うんだろう。



