「——アレッ、天香ちゃん?」


美術室の方に戻っていると、体育服を着た軍団の1人に声をかけられた。


「…、右京くん!」


相変わらず目立つ青い髪。汗をかいたらしく、それを左手で掻き上げている。


「うわ、なんか久しぶりに会った気がするわ。何してんのこんなとこで」

「美術だったの。休憩で抜け出したんだけど、もう終わるからこれから戻ろうかなって」

「あぁ、そう」


右京くん、汗びっしょり。サッカー頑張ってやってきたんだろうな。それでも爽やかなんて、やっぱりイケメンってずるいと思う。


「千歳も、俺のすぐ後ろにいたから来ると思うよ」

「千歳くん…?」

「そうそう…、あ、ほら。千歳!」


右京くんの、大きな右手が上がった。その方に顔を向けると、目立つ星色の頭が見えた。


そして、ヘーゼル色の目にとらえられる。


「あ……」


千歳くんだ。なんだか、かなり久しぶりに感じる。まだ、1週間くらいしか経っていないはずなのに。


「…天香。何してんのこんなとこで」


少しだけ、汗をかいてる。千歳くんも、あの中でサッカーしてたんだ。見えなかったなあ。


「…えへへ。美術の時間に、トイレ行きたいって抜けてきたのです」

「はいはい、サボりね」

「なっ、違うよう!」


…なんて、本当はサボりだけど。でも、ほんの5分間くらいだからいいんだもん。

あ、もう授業終わっちゃった。まぁいいか。片付けは後からやりに行こう。


今はなんとなく、千歳くんに会えたこの時間を大事にしたいと思った。