先生に許可をとって、美術室を出た。
アクリル絵の具の匂いで充満していた箱の中に閉じ込められていたから、外の清々しい空気が余計に気持ちよかった。
それでも、夏に入った今は、もうすっかり蝉の声も強くなった。
「暑いなあ」
渡り廊下から外を見下ろす。運動場では、体育をしているのが見える。どの学年だろうか。サッカーをしている。
それを見ながら、左手首にはめていたシュシュで髪の毛を束ねた。首に張り付いていた髪の毛を剥がすと、そこに生ぬるい空気が抜けていく。
ピピーッと、笛の音が聞こえた。見ると、さっきまで動いていた運動場の子たちは、ボールを蹴るのをやめて、1つの場所に集まっている。
「…って、もうすぐ授業終わるんだ」
時計は、授業終了5分前。
だからか。もう、片付けの時間なんだ。ということは、あたしも美術の授業からは解放されるのか。
だったら、あと5分はここにいよう。もう、あんまりあの空間には戻りたくないし。
運動場に集まっていたクラスの授業が終わったらしい。タオルで汗を拭きながら、校舎側に入っていく姿を見ていると、だんだんと足音が大きくなってきた。
みんな、もう上がってきているのか。
「あー、アッチ〜。シャワー浴びてぇ」
「この時期にサッカーってありえねぇだろ」
「汗臭いまんま過ごすのキツイわ」
男子の声。少しだけ、不満の方が大きそうだ。近くに男子更衣室があるから、集まってきているんだな。
時計を見る。残り1分になっているのを確認したから、教室に戻ることにした。
あとは片付けをして終わり。
楽ちんだ。



