言葉にするのは簡単だ。今までだって、そうして来た。思ったことは、口に出してきた方だと思う。
…でも、この日は違った。
目を見開いた千歳くんと目が合った時、思わず逸らしてしまった。下を向いてしまった。
熱が顔を覆うのが分かる。頭のてっぺんにまで、心臓の動きが伝わってくるくらい。
…あ、あたし今、恥ずかしいんだ。
「…ごめん、なんか今あたし、子どもっぽいこと、言った……」
千歳くんに会えるかもなんて。会えなかったらじゃあどうしたんだって感じだ。
それはそれで、ある程度したら帰るつもりだったんだけどさ。それは、そうなんだけど。
「…天香ってさ、」
「!」
恥ずかしくてポワポワと熱い空気に囲まれていたら、それを千歳くんの言葉が割って入ってきた。
思ったより落ち着いた声。彼が今、どんな表情をしているのかなんて、分からない。
「天香って、そーいうこと無意識で言ってんの?」
「えっ…?」
…無意識? そーいうこと?
「…どーいうこと?」
思わず、千歳くんの方を向いてしまった。いつも通りの表情に、少しホッとする。
「だから、俺に会えるかもとか、そーいうの何か考えがあって言ってんの?」
「え? え?」
普通だったのに、少しずつ苛立ちが入ってくる声と表情に、冷や汗が垂れる。
千歳くん、お、怒ってる?なんで?
「考えってなに? あの、あたし何かまずいこと言ったの?」
「……」
分かんない。千歳くんに何か失礼なこと言っちゃったのかな。こわい。千歳くんを怒らせるのはこわい…!
「えっ、だったらあの、ご、ごめんなさ…」
慌てて謝った。額を地面に擦り付けるくらい頭を下げればいいと思った。
さっきまで熱がこもっていたのに、いつのまにか冷や汗によって冷まされた顔を下に向ける。
でもそれは、彼の手によって、阻まれてしまったんだ。



