鎌倉駅に着いた。いつもは1人で“ 長いなあ” と思いながら歩いている道のりが、一色くんと歩くとあっという間に感じた。

帰宅ラッシュで、人の波が打ち寄せる。その流れを塞きとめるように、改札前に2人で立つ。


「…じゃ、気をつけて帰ってね」

「うん、ありがとう一色くん」


1日を、一色くんで終えられること、やっぱりちょっと、嬉しかったよ。今日の放課後は夢みたいな時間だと思ったんだ。

そう思わせる一色くんはすごい。


…また、会えるかな。

一色くんと話していると、笑っていられる。彼の世界に触れていると、新しいことばかり見えてくる。

自惚れてしまっては、千種やほかの女の子たちから冷たい視線を向けられるのかもしれないけれど、それでもやっぱり、近づきたいと思ってしまう。


…ねえ、一色くん。



「…あたしと、友達になってくれますか」



気がついたら、人混みの中に言葉が生まれていた。溢れるように口から落ちて行ったそれは、確かに自分の耳に届いていた。

それが聞こえた瞬間に、思わず口を覆ってしまう。


「あ…、えっと…」

「友達って。こんだけ頻繁に会って話してんのに、友達じゃないとかあんの?」

「…!」


やっぱり、一色くんにも聞こえていた。そして、恥ずかしがっている余裕もないくらい、彼はすぐにそう答えてくれた。



…うれしい。
その一言が、うれしいよ。