香春さんは、僕に対して遠慮するということを知らないようだ。
男の僕でもびっくりするぐらいの量のお肉を次々頼んで、お肉の間にたまにベーコンとかソーセージとか、おさつバターを挟んで、挙げ句の果てにシメはやっぱりこれに限るね、と言ってバニラアイスまで注文した。




「…よくそんなに食べられるね。香春さんの胃袋を見てみたい。」

僕が言うと、香春さんはアイスの口に運びながらにんまり笑った。


「雪人にご馳走してもらえるの、最後かもしれないじゃん。奢ってもらえるときに奢ってもらっとかないとね。」

そう言って、とてもとても美味しそうにバニラアイスを頬張った。




…昔から、変わらない。
美味しいものを食べると、世界一幸せそうな顔をする。
見ているこっちが、香春さんが食べているものを食べないと損なんじゃないかと思うほどに。


香春さんの笑顔に負けて、僕はついうっかり、シメのバニラアイスを注文してしまった。