「香春さん、諦めないでよ。僕は、香春さんが好きだよ。」


僕が告げると、香春さんは大きく目を見開いたあと、急にぼろぼろと牡丹雪に負けないくらい大粒の涙を零した。




「だって、だって。雪人はこれからじゃん。楽しい大学生活待ってるし、きっと大学には可愛い子いっぱいいて、雪人はいつか恋人作って、私はずっと雪人のお姉ちゃんで、」

涙声で言葉を並べる香春さん。
いつもは冷静で堂々としている香春さんだけど、今日はとても、とてもとても愛おしく感じる。

…ほんとに僕は、馬鹿だなあ。
香春さんは、いつだってこんなに可愛いのに。




僕は、雪から香春さんを守るように、香春さんをそっと抱き締めた。


「私、もう大学生じゃなくなるよう。おばさんだよ、おばさん。雪人とは釣り合わないよう。」

心底困ったように泣きじゃくる香春さんに、僕は吹き出してしまう。




「何の心配してるの。香春さんは香春さんでしょ。」

香春さんの背中を撫でると、春の暖かさを感じた。





「雪人は、私で、良いの?」

僕を見上げる香春さんの顔を見て、僕はやっぱり香春さんが好きだと思った。

だって、香春さんは香春さんだから。
ずっと変わらない、僕の好きな香春さん。



「僕は、香春さんが良いな。…香春さんが、遠距離恋愛、我慢してくれるならだけど。」

僕が言うと、香春さんはぶんぶんと首を上下に振った。



「勿論だよ、…私も雪人が良い。」


香春さんは、そう言って、泣きながら、さっきバニラアイスを食べていた時よりも幸せそうな顔をした。