「あ、ごめんね座るとこなくて。ベッドに腰かけちゃっていいよ」
「うんっ」
そんなとこ・・・とお母さんは渋い顔をするけど、環くんは早速座り込み、置いてあったクッションを手に取って遊びだした。
良い意味でイマドキの男の子だ。
変にスれて成長した様子も、チャラチャラした感じもしない。
安心して眺めていると、話が始まらないことを危惧したらしいお母さんがあたしたちを見比べた。
「塔子に話があって来たんだって」
「あたしに?」
滅多に会うこともないイトコが、わざわざ家まで会いに来る理由とは一体?
ピンとも来ない、と手っ取り早く本人に聞く体制を取る。
すると環くんはふにっとクッションを摘まみ、じゃれる犬みたいに笑って
「塔子姉って不祥事で会社首になって、今プーなんでしょ!」
物凄いピンポイントで地雷を踏んできた。
いきなりの先制攻撃に防御態勢の取れてなかった身体がよろめく。
何故知っているのかと聞きたくても「う、・・ん・・」と絞り出すような肯定しか出てこない。
いや、バラしたのはそこで目を泳がせている、環くんのお母さんの姉・・・もというちの母だとわかってはいるけども。

