心当たりがないまま、階段を上がってくる音が聞こえる。
あたし今すっぴんだけど・・・と万が一に備え慌てて眼鏡を手探った時、ドアの陰から、文字通りひょこっと顔を出す、お客様。
邪気のない可愛らしい顔でこちらを見つめるのは、高校生がよく来てるようなジャージを着た男の子。
ていうか
「えっ・・・環《たまき》くん!」
ホントに高校生である、イトコの環くんだった。
「こんにちは!塔子姉。久しぶり~」
あたしがびっくりした表情を見せると、いたずらが成功したようにニコニコ笑って中に入ってくる。
こりゃ珍しいというのも無理はない。
同じ都内に住んでいると言え、彼とは毎年お正月に会うくらいで、実際に顔を合わせるよりもアルバムで見る回数の方が多いくらいだ。
前回のお正月はあたしが取引先との新年会に出てたから会えずじまいだったし、約2年ぶり?
その頃は受験生だったのに、今じゃ学生寮に入って頑張ってるって聞いたっけ。
予想だにしなかった再会に、座ってと促すのも忘れて環くんを見返す。
ちょっと背が伸び・・・たかもわかんないな、ここまで久々だと。
「どうしたの、急に。1人?おばさんは?」
「あはは、子ども扱いやめてよ塔子姉。俺もう17だし、1人で十分来れるって」
正面に寄ってきたことで、ようやく記憶の中の彼と一致し始める。
男の子のわりに眺めのまつ毛と丸い瞳が可愛らしさを強調させる、ここは中学時代と変わってない。
人懐っこい性格ゆえに、会えばこうして気まずさを発揮させず喋ることはできるところも。

