「おー、マジで塔子姉がいる!なんか変な感じ」
「あのねえ、君が呼んでおいていうセリフ?」
「へへ。ありがとー、来てくれて」
開口一番の言葉に呆れた振りをしてみても、無邪気なこの子には効かない。
まあいっか、あたしだってまだ自分の立ち位置が不思議なくらいだし。
とりあえず環くんの顔を見れたことであたし自身もほっとして笑みを返す。
と、一緒にいた男の子が小さく環くんのわき腹を突いているのが目に入った。
日焼けした健康的な肌にピッタリの、大きな瞳と太めの眉。
定番な五分刈だし、おそらく環くんと同じ野球部だろう。
「環、俺のこと紹介してよ」
「えーめんどい。自分で言って」
「いいじゃん、最初が肝心なんだから」
だから自分で言えっての!ともっともなことを返され、くねくね身を捩らせて環くんにねだっている。
声をかけたいけど自分からは恥ずかしいという気持ちはよくわかる。
でも、こんな間近でやられたら逆におかしくて笑ってしまいそうだ。
仕方ない、思わず吹き出す前にあたしから切り出そう。
「こんにちは、初めまして。環くんのイトコの西崎塔子です」
「どっ、どーも初めましてっ環の大親友の遠藤《えんどう》隆弘《たかひろ》です!」
こちらが名乗った瞬間、彼は恥ずかしそうな顔をキリッと一変させ、あたしの倍以上大きな声で挨拶を返してくれた。しかも敬礼付き。

