コップを洗うついでに、水切りラックに立てかけてあったいくつもの食器類に目を通す。
おそらく朝食にて使用し、登校前にさっと洗ったと見えるお皿たち。
すでに水切りは出来ているけど、ところどころ洗い残しでカピカピ。
中には乾いたご飯粒までくっついている物もあり、食べ物を扱う職に就いていた身としてはとても見過ごせない。
智くんの洗濯のこともあるし、今日はもう無料奉仕でとことんやっちゃおう。
いざ、と腕をまくりお湯を貯めて片っ端から漬けていくうちに、あることに気づいた。
よく見たら、お皿もコップもそれぞれ絵が描いてある。
対になっているそれは、猫だったり犬だったり、中には・・・これはスライムかな。
どれも表情が可愛くて、洗い物の手を止めて1つずつ眺めてみる。
タッチは似てるけどシリーズで揃えたにしては統一感がないし、もしかして誰かの手書きだろうか。
「へえー、すっごい」
売りに出してもいいくらい、可愛い。
全部で8ペア、数的には高校生の分かな?美術科コースの子が描いたって線が濃厚かも。
あとで智くんに聞いてみよう。
あくびをしている猫の絵を見つめていると、窓の外からザワザワした話し声と、砂利を踏む音が聞こえた。
なんだかんだで時刻は16時前、寮生が帰ってくる頃だ。

