誰か帰って来たね、なんて顔を見合わせてる間に足音はどんどん近づいてきて、やがてそれが2人分だとわかる。
『食堂だな』『わざわざ見に行くなよ』という会話が伴いだし、
「うわお、誰が彼女連れ込んでんだと思ったら透かあ」
ダイレクトにその声が聞こえ、振り返ると食堂の入り口からこちらを覗く男の人がいた。
透くんよりもずっと年上だとすぐにわかるくらい落ち着いた雰囲気のその人が、あたしと目を合わせ会釈をする。
反射的に頭だけ下げたけど、それで終わらせてはいけない。
慌ててすくっと立ち上がったところで、透くんが「ざんねーん」と明るく笑って、先に紹介をしてくれた。
「新しい寮母さんっすよ!」
その瞬間、男の人はえっと口を開けた状態で固まり、さらにその背後からもう一人が顔を出す。
こちらもさっきの写メには写っていなかったため、大学組の人だろう。
今度はこの二人がぱっと目配せするように顔を合わせ、並んであたしの方を向いた。
「環が言ってた人?随分若いな・・・あ、俺、道場《みちば》友史《ともふみ》です。一応院生してます、よろしくお願いします」
「えーと、同じく尾澤《おざわ》駿佑《しゅんすけ》です。世話んなります」
「西崎塔子です。慣れるまでご迷惑おかけしますが、よろしくお願い致します」
なるほど、透くんたちにも声をかけてくれるという2人か。
確かに良い兄貴分という雰囲気だし、透くんとの話し方からしてもくだけた関係みたいだ。

