「そうだ、これ見て。高校生組しかいねえけど」
何かひらめいたように手を叩いた透くんが、身を乗り出してスマホを見せてくれる。
そこに写っていたのは、この寮の入り口を背景にし、若い子たちがずらりと並ぶ姿だった。
集合写真よろしく上下の列に分かれた8人の男の子たち。
下段の真ん中に、年配の女性がいる。この方がきっと、前の寮母さんだ。
おそらく辞めるという時に記念として残したんだろう。皆笑顔を見せているけど、どこか寂しそうだから。
それにしても。
少しふっくらめの体系に、パ・・・パンチパーマ?
ぷっくりした頬にえくぼを浮かべ、なんでもどんと来いと言ってくれそうな、豪快な笑み。
優しいお母さんを思い描いてきたけど、どっちかといえば肝っ玉母ちゃんだったかな。
でもこの雰囲気からも、慕われていたことは十分に伝わる。
「お、透くん発見。環くんも」
「へへー」
透くん、寮母さんに肩組まれて嬉しそう。反対隣りにいる子も抱き寄せられてるけど、この子はちょっと泣きそうだな。
拡大しながらなんとなくその子に目が留まると、透くんが「それが理来だよ」と指さした。
「理来くん?・・・最初になんか言ってたね。不穏なこと」
「理来と、あとこの端っこにいる昴。こいつらも超人気。でもさ、雅さんと違って寄ってくる女は相手にしねータイプだから」
「うん。すると?」
「強行突破してくる!盗撮とか、出待ちされたりここ忍び込まれることとかもあるんだぜ。
理来なんか寝顔撮られてさ、そん時はさすがに苦情出して関係者以外立ち入り禁止にしたんだけど」
想像以上の境遇に言葉も返せない。出待ちはまだしも盗撮に不法侵入?チャレンジャーすぎでしょ。
うんざりといった顔つきでため息を吐かれ、その大変さが沁みてくる。
そんなことがあったから、あたしを見た瞬間、まず疑ってかかったのね。

