洗濯が始まっても、透くんは動く気配もなくそこにいる。
差し込む陽射しが心地良いのか、窓辺を見て目を細め、ふうっと息を吐いて。
お昼寝も良いけど、少し情報を得ておこうかな。
「学校の授業って何時までですか?」
「基本は15時半。進学コースの奴らは16時半。環は、今日は部活ねえって言ってたから4時前には帰って来ると思う」
壁掛けの時計はまだ14時半だ。
つまり、あと1時間以上は・・・
「・・・」
ここでようやく、違和感に気づく。
誤解された焦りや勢いでスルーしてたけど、この子1人だけ、なんで帰ってきてるわけ?
「透くんはずいぶん早いお帰りなんですね」
「あっ」
振り返ってにっこり笑いかけた途端、しまったという顔をする透くん。
「は、腹下しててさ~」とお腹を擦り始めるけど、顔色は良いし、一回もトイレに駆け込んでた様子はない。
「そうですか。私、正露丸でしたら持ち歩いてますよ」
「あー、そ、それよりさー あっ、水!水撒きしねえ?そこに畑あんの見た?」
物凄い誤魔化しっぷりに吹き出しそうになるのを堪えて提案に頷く。
別にあたしは先生になったわけじゃないし、理由も知らずにサボるななんて言うつもりはない。
高校生は多感な時期だし、時には抜け出したくなる日もあるだろう。
嫌いな授業って理由だけで毎回サボるつもりだったら、根性ない奴と思うけど。

