ハッと手を止めて振り向くと、入り口にこちらを見て思い切り指をさす少年がいた。
おそらく高校生組の子だろう。怒りのままに睨み付ける表情がまだ幼い。
「てめえ、何してんだよ!どうやって中入った!また雅さんの取り巻きかよ!」
確かに、自分でもこの姿はないわ。そりゃ叫ばれても怒れない。
咄嗟に否定できずにいると、ズカズカとあたしに向かって来る(そしてなんか不穏なこと言ってる)少年。
髪の色は金に近く、ピアスも数個つけてて失礼だけどガラはよくなさそう。
「違います!あたしは今日からここの寮母になる西崎・・・」
「嘘つけ!そうやって瑠依とか昴のプライベート画像盗撮して売りさばく気だろ!もう何人目だよ!」
えっ、そんな事件起きてるの!?
ここ学生寮でしょ、アイドル養成所じゃないよね!
予想外の背景に一瞬の戸惑いを見せたうちに、少年はとうとう目の前まで来ていた。
眉をこれでもかと顰めたまま、あたしの腕を掴んで凄む。
「今なら黙っててやる。早く出てけ」
うわ、本気で怒ってる。凄い力、もう加減も知らないって感じ。
ギリギリと加えられた圧に骨が軋みそうで、思わず顔が歪む。
でもここで怯えるのも、ましてや逆切れなんてもってのほかだ。
あたしは社会を切り抜いてきた大人。
誤解は真正面からきちんと解かなければいけない。

