ご飯は皆が揃ったら。





「もー加純くんたら何してんだか・・・結局間に合わないじゃん。すみません、僕14時から用があるので戻ります」
「はい、今日はどうもありがとうございました。これからもよろし・・・」
「15時過ぎれば誰かしら帰ってくると思うので、待ってて下さい」

一度下げかけた頭をキュッと止め、目線だけ久野さんに向ける。
彼は既にドアの方へ歩いて行き、固まるあたしには気づいてない様だった。

「あのー待ってるって、私ひとりじゃ」
「契約書頂いた以上、今日から西崎さんが寮母なんで大丈夫です。お茶くらいは買い置きしてあると思うのでご自由にどうぞ、じゃ、また後日!」

示し合わせたように鳴り響くスマホを片手に、久野さんは「はいはいっ今戻りますー」と忙しなく廊下を走って行った。
ドアの閉まる音で我に返ったふりをしてみても、もちろん見てくれる人はいない。

「いきなり放り出されてどうすんのよ・・・」

久野さんはああ言ってくれたけど、いくら寮母になるとはいえ誰もいない寮内で一人待ってて良いんだろうか。
しかも図々しくお茶まで入れて飲んで待つなんて、何も知らない人からしたら不審者感半端ない。

やっぱり車の中で待とうかな、でもまだ鍵もらってないし施錠なしで出て行くのもまた失礼でしょ。
じゃあ玄関の前で待つ?それもある意味怪しい。

とりあえず談話室にて佇み、最初に帰ってくるのが環くんでありますように・・・
と願った時こそ、玄関が開く音がするというこの法則。

慌てて姿勢を正し、こうなったら掃除でもしてた方が寮母らしいんじゃないかと、半ば混乱気味にそばにあった引き出しを開けた瞬間

「あっ!?ドロボー!!」

すごい嫌なタイミングで叫ばれた。