ご飯は皆が揃ったら。




そういや親戚一同で集まった時、いつも最後まで起きてこないのは環くんだったなんて思い返していると、久野さんがチラチラと自分の時計を見出した。

「本当は寮長がこの場に立ち会ってくれるはずだったんですけど、来ないなあ」
「あら・・・そうなんですか」
「加純《かすみ》くんていう、院生の子なんですけどね。今後、何かあれば彼を通じて大学側に回してもらっても良いんですけど・・・
本人がいなきゃ説明のしようもないですね。しょうがない、先に寮内の説明しますんでついて来て下さい」

そう言って席を立ちながらも、久野さんはまだ「講義ないって言ってたけどな」と呟いている。
そりゃ誰かしら顔合わせをしておいた方が無難だし案内もわかりやすいだろうけど、スタスタ歩いてく所を見ると久野さんも寮内には詳しいのだろう。
いざとなったらまず環くんに聞けば良いやと、その寮長さんのことは気に留めず、後について歩く。

「この先が食堂となってます。キッチン部分が狭いんでやりにくいかもしれません」
「いえ・・・十分ですよ、この広さ」

まず、談話室から直接繋がっていたのが食堂だった。

まさかの対面式ってところに面食らったものの、シンクのスペースもかなり取られている。
例えばここの寮生たちが手分けして料理をするなら狭いだろうけど、あたし一人で準備するには手が余るくらいだ。

でも冷蔵庫も調味料棚も食器類も、手を伸ばせば届く位置に集結しててやりやすそう。
これはきっと、前の寮母さんが上手く配置を決めたんだろうな。