降りてから一つ、深呼吸。
指定された時間より結構早く着いちゃったけど、このまま訪ねて行って平気だろうか。
とりあえず入口へと向かったところで、目の前のドアがガチャリと開いた。

そのタイミングの良さに、インターホンを鳴らそうと指を構えたまま、出てきた相手と向き合ってしまう。
向こうも思ったより至近距離にいたあたしに驚いたのか、小さく「おっと」と呟いた。

「西崎塔子さんですか?」
「はい」
「お待ちしてました」

それでも姿勢を正し、笑顔を見せてくれたのはあたしより少し年上であろう男性だった。

もしかしてここの寮生さんだろうか?
でも学生にしては落ち着いた雰囲気だ。

広い玄関には左右に靴箱が設けられており、そのスリッパの数からもやはりここが大所帯なことがうかがえる。
平日のお昼過ぎだけあって、今ここにいるのはこの方だけなのか揃えられたスリッパがきちっと持ち主を待っていた。

「案内は後程しますので、まずこちらにどうぞ」

穏やかな声に促され、軽い会釈を交わしながら中へと入る。
通されたのは大きなテーブルを囲み三方にソファー、空いた部分にこれまた大きなテレビが構えられた部屋だった。